表現の狭さが生活を狭くする

自分の想いにピッタリな言葉があるという事、そしてそれを自然に人に伝える事が出来るとしたら、人とのコミュニケーションはもっと彩りあるものになるでしょう。英語で生活をしていると、日本語で生活している時よりも、言葉によるコミュニケーションがスムーズに感じます。日本語での生活では言わなかったような表現が、英語では普通に口を突いて出て来る。他のエントリーで「何でもカタカナ英語に置き換えてしまうのは変」と書きましたが、日本語には無い言葉というものも確かに多く存在します。しかし日本語に無い表現というのは、日本語で生活していると、無いという事にさえ気付きにくい。

ここからは以前書いた記事を再編集してお送りします!(笑)


DARRYL WORLEY - "I MISS MY FRIEND"

中学生の頃、姉が試験勉強の暗記のためにトイレに手書きの単語リストを貼っていて、トイレに入る度にそのリストの中の「miss〜=〜が居なくて寂しく思う」という部分が目に留まって忘れる事が出来なくなりました(笑)それまで「ミス」といえば「失敗する」「未婚女性の敬称」という意味ぐらいしか知らなかったので、たった一語で「〜が居なくて寂しく思う」なんてヘンテコな表現でどうやって使うのか不思議に思っていただけに、記憶に留まったのかもしれない。

今ではしょっちゅう「I miss you」なんて言葉を使っているけれど、これを日本語に訳すとちょっと違ったニュアンスになりそうな気がする。もう会わなくなってしまった友達の事を「I miss her!」などと言うけれど「彼女が居なくて寂しく思います」と言うと、「居ない」に比重がかかり過ぎているようでどうもちょっと違う。「彼女が恋しいです」と言うと「恋」という字が入るのでなんだか日本語だと違ったニュアンスになりそう。メールなどでも「I miss you!」としょっちゅう使うけれど、やっぱり日本語で言うところの「あなたが居なくて寂しく思います」でも「あなたが恋しいです」でもない(←そもそもそんな表現を日本語での生活の中で使うかと考えると特に)。日本語では「会いたいね」という感じなんですが、「会いたいね」と英語で書くとしたら「I want to see you」と書けば良いので、「I miss you」にピッタリ当てはまる日本語が見つからない。「I miss my friend」も「友達が居なくて寂しく思う」と訳すと、まるで友達が居ない人みたいな意味になっちゃうし、「友達が恋しい」のほうがどちらかと言えばしっくり来るのかな。日本語で言うとしたら「友達が懐かしい」という感じのニュアンスなんですが。

英語でしょっちゅう「I miss you!」と言えているように、もしかしたら日本語でも「あなたが居なくて寂しく思います」とか「あなたが恋しいです」なんて表現を日常的に使っていたら、もっと気軽に言える表現になっていたのかもしれないけど、いかに日本人が生活の中で直接的表現を避けているかって事ですね。「(あなたに)会いたいです」ではなく「(いっしょに)会いたいですね」って同意を求めるような言い方(相手は自分と会いたいと思ってるかどうか解らないのに!?)も、「自分は会いたいです」とハッキリ言えない遠回しな言い方なのかも知れません。言葉自体は存在するのに、実際に使う表現のバリエーションが少ない。英語で生活すると、それまで言えなかった自分の気持ちの表現がかなり広がる。気持ちの自由さが言葉の習慣に邪魔されないというか。

「会いたいです」「会いたいですね」は英語にすると「I want to see you」「 We want to meet (each other), don't we」と言う風に、まるっきり違う。一番の違いは主語がハッキリしている事。これは誰が何にどうしたいかという概念がちゃんと出来ていないと言えない・・・つまり、自分の中で「考えに曖昧さが無い」ということ。「ね」と一文字つけるだけで、主語や目的語まで変わってしまっているという事に、日本語を何気にしゃべってる日本人は気付く機会さえ無い。時には自分がしゃべっている要点が自分で見えず、結局のところ「自分がどうしたいのか解らない」という場合もある。

今日、友達に気軽に「How's your love life?」と言ったのですが、日本語だったら「あなたの愛の生活はどう?」なんて絶対言わないなと自分で思った(笑)「彼女とは最近どうなの?」みたいな、ものすごく限定された言い方になっていたと思う。「愛」とか「生活(日々)」なんて言葉が普段の会話の中では出て来ない日本語での生活・・・。

日本語を何十年も使って生活して、いまその呪縛から自由になった気がする。自分の考えている事が自由で真っすぐな言葉になって出て来る。日本語には「曖昧さ」というものがあるけれど、それが「ごまかし」や「気持の不整理」、まして思考を妨げるものでであっては利点とは言えない。

「言語が思考に及ぼす影響」というと大袈裟に聞こえるかも知れないけれど、どんな言語をしゃべって生活するかが、考え方や生き方にもかなり影響すると僕は考えます。

関連記事:英語脳で日本語を見つめる

「 表現の狭さが生活を狭くする 」へのコメント

言葉というものの不思議さ

初めまして。沈丁花さん、と申します。日本の家の裏庭のご不浄の傍らなどで、ひっそりと匂っている花です。それももうほとんど花も散り落ちてしまいましたが。浅学にして、鈴木盛人様のことを、これほどのお仕事をなさっていらっしゃるのにこれまで存じ上げませず、「鳥獣戯画」のブログタイトルに惹かれて、ふらふらと迷い込んだ者です。音楽に関してもビートルズの頃から一歩も進歩しておりません。ただ、あなた様の日本の文化の現状に対する小気味いい啖呵にすっかり酔ってしまい、今夜ずっと御記事を読んでいます。私自身は英文科を出たにもかかわらず、in-だのde-だの似たような単語が膨大な数あることや、さすが議論の国、英国で生まれた言語だけあって、対人関係に関する言葉、勝ち負けに関するような言葉などがあまりに多いのにすっかり恐れ入り、早々に尻尾をまいて逃げ出してしまいました。「曖昧な日本の私」とでもいいますか、典型的な日本人でして。「ね。」一つで、これだけ素晴らしい比較文化論を展開できるなんて。本当に面白いです。私も安易に「ね。」は使うまい、と、常々心がけています。そうそう、この「私も」の「も」も曲者です。相手の許可なく相手と同じ立ち位置にいるってことを暗に言っている言葉ですから。なんだか面白いなあ。ずっと以前に聞いた出典のはっきりしない情報で申し訳ありませんが、日常使われる語彙数を仮に日本が6,7万語とするなら、英語は11万語、ロシア語は2,3万語というのは、アメリカでお暮しになって実感なさいますか?これもよくあるジョークネタですかしら。おっと。貴ブログがあまりに面白いので、初対面であることも忘れてつい長話してしまいました。またお邪魔させていただきます。  

@沈丁花さま
はじめまして。ちょっと前に勝手に「見習いたいクリエイティヴ系ブログ」(リンク)に加えさせていただきました。この「クリエイティヴ」とはデザインの仕事という意味だけでなく、創造的な考え方という意味です。ブログタイトルは「鳥獣戯画」から一文字変えて「鳥獣遊画」なんですよぉ。僕も英文科出身なのですが、勉強としての英語が嫌いで全然身に付きませんでした(汗)覚えても使わなければ意味が無いでしょ?と開き直ってました。10年前に英語だけの生活に飛び込んで、それでも教科書を開いて勉強しても身に付かない体質が解ってましたから、ひたすら聞く&しゃべるだけでやって来たため、未だに読む&書くは苦手です・・・特に読むのはめちゃめちゃ遅いので、手紙や記事などは読み上げてもらって耳で理解してるという有様でして・・・まるで時代劇の村人が偉い人に手紙を読み上げてもらって理解するみたいに(笑)辞書も引かないので、「この英単語は日本語ではこう」という明確な答えは持っておらず、翻訳せずに英語を理解してます。幼児が聞いて英語を覚えるような感じですね。なので↓こんな事に時々気付きます:
http://artshrine.blog9.fc2.com/blog-entry-1497.html
ボキャブラリーはめちゃめちゃ少ないので語彙数の事は解りませんが、日本語のように辞書には言葉が沢山あるのに生活の中で使わないのでは、あまり意味が無いですよね。表現も口語ではかなり狭いですね。先日「I will try to be a good neighbor」というのを隣人の日本人に通訳して伝える時にも「よろしくお願いします」と訳しました。「良き隣人であるよう心掛けます」だと、何だか問題を起こした隣人の反省文みたいに聞こえると感じたからです(笑)そもそもそんな言い方を、日本人は生活の中でしない。でも日本人が日頃から「良き隣人であるよう心掛けます」というような表現を普通に使っていたら、何の問題も無くそのままの表現で訳せたのだろうなぁと・・・。

このブログで取り上げた一番古い歌は↓この辺りだと思うんですが、沈丁花さんはご存知でしょうか?
http://artshrine.blog9.fc2.com/blog-entry-1259.html

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