僕の第二のホームタウン、ニューヨーク州ラインベックの街の銀行です。
我々日本の生活の中では「新しい店がオープンする」といえば新しい建物が出来るというのが当然のように思われていますが、アメリカでは決してそれは当たり前では無い。この銀行も昔から使われていた古い建物をそのまま利用して銀行としてオープンしたものです。入り口に「銀行」と書いてあれば銀行なのです。あえて銀行っぽい建物に立て替える必要など無く・・・



こちらは以前「教会」だった建物ですが、今はイタリアン・レストランです。日本ではお城風ホテルとか教会風結婚式場など、偽物の建物をわざわざ新しく建ててオープンさせたり、そうやって建てた新しい建物をわざと汚して古っぽく見せたりしますが、本物の古さや風格に敵うものは無いでしょう。



こちらは郵便局の中です。築200年以上経っている古い建物を、そのまま郵便局として使っているそうです。壁画も当時からあるもの。USJやディズニー・シーなどにありそうなお洒落な造りですね。でもこちらは復元などではなくホンモノです。



これはMAZDAのショールーム。写真では看板が見えませんが、外(庭)にお馴染みのMAZDAのロゴの看板が出ていて、大きな窓の中に車も見えました。これも普通の家か店舗だったのでしょう。



ラインベックにはアメリカで一番古いホテル『Beekman Arms』がある。1766年創業というから、もう240年も営業しつづけている。

友達のブログで、昔から思い入れのある駅舎が取り壊されるというトピックを見て、どうして古いというだけで取り壊してしまうのか疑問に思いました。正直、僕も以前は「新しくオープン=新しい建物」という概念が染み込んでいて何の疑問も持っていませんでした。そればかりか、銀行は銀行らしい建物、ショールームはショールームらしい建物であるのが当たり前という概念を持っていたと思います。でもニューヨークでもよく見られるように、昔からある古い建物の中身だけを改装してレストランとしてオープンするというようなものは珍しくなく、むしろそれが風格さえ醸し出しているし、すごく良いなぁと感じる。

ちょっと話が反れてしまうけど、僕の田舎は年々さびれて「駅前銀座」と呼ばれる一番の繁華街であるべき場所は日曜でもほとんど人通りが無く、シャッターを閉じたままの店も増え続けている(開いてる店のほうが少ないかも)悲惨な状態だけど、30年ほど前はデパートもいくつかあって、かなりの繁華街でした。そんな廃れた街でも、住民にとっては愛着があり、それはどこに住む誰にでもあるものだと思うけれど、ノスタルジーを大切にする気持ちなのだと思います。
ただ、最近気付いたんだけど、そんな故郷の人達のブログなどを見ていると、古くてボロボロになった建物の写真を載せて「こういうのっていいなぁ」と言っている人達が意外と多い。そこに写ってるのは確かに懐かしいものなのだけど、全く手入れされていなく腐敗して傾いてしまったような家だとか、サビサビで放置されたままの看板だとか、そういうものなのです。僕は、古いものを敬い大切にする事なら素晴らしいと思うけど、そこにあるのは大切にされず放置された腐りかけたものばかりで、人の気配さえしなかったりする・・・取り壊す余裕もなく新たに何か建てる見込みも無いような、衰退し切った街の様子。僕はそういうのには全く魅力など感じず、むしろ「大切にして来なかった証拠」のように見えて、「恥ずかしい」「残念」「このままじゃいけない」と思う。いくら自分の街でもとても誇りには思えない。無くしてしまったものを懐かしむには、無くしてしまえば出来るんです。でも、そこに本当に価値を見出して大切にしているなら、無くす事も無いのです。古いものが立派に生き続ける街ニューヨークでそんな事を学びました。
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コメント

古いもの、懐かしいものを『いいなぁ』とか『大切にしたい』とは思っても、それをきちんとした形で残していこうとか維持していこうする具体的な行動を起こす人というのはなかなかいませんよね。
僕の故郷は北海道の小樽というところです。今では観光都市となっていますが、その昔は北海道の経済の中心地でした。港町であり、運河や赤レンガの倉庫なども残っていて、今はそこが博物館になったり、レストランになってたりして街の一つのシンボルになっています。
小樽運河というのは20年ほど前には取り壊すか潰すかでかなり問題になったのですが、今はすっかり整備されきれいになっています。でもその前は近くを通るだけでもひどい臭いがして好んでそこへ行く人など誰もいませんでした。
 しかし街の文化、財産である運河を残そうとする一部の市民から運動がはじまり、署名を集め、何度も何度も交渉を重ねて市役所を動かしたそうです。
 それが結果的には今の観光都市としての基礎になりました。
 何に価値を見出すかと同時に、それに対する思い入れや考え方など、色んな面で希薄になりすぎているのが今の日本だと思います。このままでは素晴らしいものを残していくことも、生み出すことも、困難になっていくばかりではないでしょうか。
 変えていくために行動しなくてはいけませんね。
---------- masashi [ 編集] URL . 03/05, 11:41 -----
本当にそう思います!
こんにちは。

>全く手入れされていなく腐敗して傾いてしまったような家だとか、サビサビで放置されたままの看板だとか、そういうものなのです。

どんなに良い物でも、大切に手入れしなければ、どんどん古くなり傷んでしまいますよね。手入れして使うより、新しいのを買ったほうが手っ取り早いと思う人が多いのだと思います。その結果、古い物が廃れてしまいます。
古い物を大切に使わない精神は、創造力の欠如であり、愛も知性も無い行為だと思います。それが、今の日本に蔓延しています。
何でも経済効率で物事を考える人が多いんだと思います。心の文化が見失われてしまったのでしょう。このままでは、あと100年後、日本は世界中から軽蔑されるくだらない国になっている事でしょう。
日本より歴史の新しいアメリカでも、このように古い物をちゃんと手入れして使う文化を持っているんですね。
古い歴史を持ち、素晴らしい文化遺産を受け継いでいる日本なのに、その価値を分からない大馬鹿者ばかりの日本人になってしまった。。。。。

moritoさん、私もトラックバックさせていただきました。
moritoさんのほうのトラバはサイトに反映されていないようです。うまくいかなかったかもしれませんね(^_^;)よろしければ、再度お願いします〜〜〜(^o^)丿



---------- mie [ 編集] URL . 03/05, 18:40 -----

masashiさんの故郷は良い成功例ですね。灯が消えてしまう前にちゃんと手を打って、灯り続ける事が出来るなんて理想的です。

うちの田舎はあまりにも保守的すぎて、とにかく新しい事には反対という感じです・・・その結果時間に逆らって取り残されて死んで行っています。ショッピングセンターの存在は決して悪くは無いと思うんだけど、建てる事にも地元の商店街がすべて反対・・・その気持ちは理解できますが、地元の商店街が市民のニーズに充分応えてはいないので、おのずと時代にあった形の店が繁盛するわけです。駐車場もなく商品も古く品揃えが悪く、おまけに高く、入りにくい店でわざわざ買いませんもん。でもショッピングセンターの中にでも地元の店は魅力的な形で存在できると思うし、そういう共存は出来ると思うんですよね。
とにかくあまりに保守的で、変化がどんなものであろうと条件反射のように「反対」です。古いものが形を変えて生き続けるためのわずかな変化でさえ「反対」ですから、「駐車場もなく商品も古く品揃えが悪く、おまけに高く、入りにくい店」で自分は買わなくても昔からあるその店が閉店して無くなる事には「反対」だったりして、とても無責任なノスタルジーに引っかかっていたりするんだと思います。もう使われていない腐った廃墟でさえ無くなるのは嫌・ずっと残ってくれていたら嬉しいという感じですから、この先「懐かしいものがどんどん増える一方」でそういうノスタルジー派の人々には良い時代なのかもしれません(皮肉)。取り壊して新しく建物が建つほどの活気は無く、見込みの無いまま廃墟だけが増えて行くという感じですから。そういうのを「古いものが残っている素晴らしい街」だとはとても思えないのだけど、地元にいるとそこを誇りに思うしか無いのかもしれません・・・客観的に見るとすごくおかしな感覚だと思います。

mieさんの国立駅の話を読んで、「建て替えられるぐらいなら、まだマシ」と、自分の地元を振り返って思いました。「手入れして使うより、新しいのを買ったほうが手っ取り早い」というのは、新しくすればまた客がそれを使うという見込みがあるけど、僕の田舎ではもはや新しくする体力も無いというほど廃れてしまっています。古い店を経営する人達は完全に一般消費者のニーズから取り残されてしまっているけど、経営者だって一般市民の一人なんだから、人々が何を求めているのか解りそうなものなのに、客観性を持たずにやって来てしまったツケなのかもしれません。

我々の仕事もそうですが、どこにどんな手段で売り込んで、どんな良い仕事をするかみたいな一方的な視点での「成功」ばかり思い描いてしまいがちですが、良い絵に金を払う人達がどんな豊かな視点で人生を生きているのか、自分のその中の一人になってみないと決して知る事は出来ません。「自分は作品に金など払わないけど、自分の作品には金を払って欲しい」なんて勝手な言い分は通用しません(その時点ですでに、その絵には豊かな視点を持った人達を魅了する本質はないと思う)。共存ってそういう事なんじゃないかと思います。心が豊かにならないと、社会も豊かになりませんよね。
---------- morito [ 編集] URL . 03/05, 19:56 -----
衰退する地方都市の駅前商店街
moritoさんの故郷のお話で、思い出したのが、数年前に旅行した出雲です。出雲神社で有名な街ですが、観光地として知られる出雲神社前こそ、商店が並びそれなりの体裁を保っていましたが、出雲駅の衰退ぶりは目を覆いたくなる状態でした。
駅前から広がる商店街はほとんどがシャッターがしまったまま・・・・。人一人いない廃墟と化していました。ここら辺の人たちはいったいどこで買い物するんだろう?と不思議に思い、歩き回っていると、商店街のはずれからはるか1キロほど離れた所に、大型ショッピングセンターが見えました。
そこに行ってみると、いましたいました・・・・たくさんの買い物客でごった返していました。でも、そこはどこにでもある普通のショッピングセンターで、飛行機に乗ってわざわざ出雲に来てまで行きたい場所ではありませんでした。
結局は、地元住民のニーズにも、観光客のニーズにも応えられなくなった商店街が、大型店の進出によって滅びてしまったんだと思いました。
今の地方都市ではこれと同じような現象が起こっているという記事を、最近新聞でも読みました。
moritoさんの故郷の商店街もやはりそのような例の一つなのですね。
商店街にお客を呼ぶために、もっといろいろなアイディアや、慣習に囚われない新しい発想があれば、さびれた街も甦ることができるかもしれないと思います。
古いものを守るためには、古い常識に囚われない新しい発想も必要なのかもしれません。
古いものを生かした新しい街づくりを提案できるデザイナーが日本でもっと育っていけば、変わることもできるのかも・・・?
---------- mie [ 編集] URL . 03/05, 21:52 -----

恐らく優れたデザイナーが居ても難しいと思います。そこに住んで運営して行く人達が、消費者が望んでいるものは何かを常に知って取り入れて行くだけで良いと思うんです。「日々進化して行く」という事を当たり前に受け入れれば良いだけだと思います。「駐車場もなく商品も古く品揃えが悪く、おまけに高く、入りにくい店」が良く無いと思うのは店の経営者である以前に消費者として誰でも感じる事は出来るはずですもん。そういうのはデザイナーやコーディネーターがいくら頑張っても植え付けるのは難しい根本的な「精神」ですからね〜。

観光地といえば、どこに行っても当たり前のように「テディベア・ミュージアム」と「オルゴール・ミュージアム」があるのは謎です・・・なんか企画的にも安易すぎると思う( ̄ロ ̄;) 素人ちっくな街おこし企画って感じですよね。旅行者としてその地を訪れた時に、自分だったらそんなミュージアムに本当に行きたいか、ちょっと想像力を働かせれば解ると思う。
大型ショッピングセンターは僕は消費者としては賛成派で、そこに行けば欲しいものすべてが揃うし、買わなくてもいろんなものが見れて楽しい。地元の商店はショッピングセンターと対立しなくても、テナントとして入ってくれたら、その土地の色が出たショッピングセンターになると思うし、そういうのが「共存」だと思うんですが、消費者とは関係のない色んな「事情」でそれが不可能な場合もあるのかもしれないけれど。

ところで、僕がすごく気に入っているチェーン店で「うかいグループ」というのがあるのですが;
http://www.ukai.co.jp/
遠くても足を運ぶ価値のあるお店を様々な形で出しています。単にノスタルジックに走っているわけでなく、古き良きものの価値を本当に解っている人達向けの本物志向です。粗末にされた故に古びてしまったノスタルジーとは対照的に、生き続け、そしていつも人で賑わっています。そこを訪れる人達は当然Quality Peopleなわけで、価値があるからお金を払える人達です。

「うかい鳥山」サイトの「日本人に帰るとき」というコピーです:

> 日本には、永い歴史の中で熟成されてきた
> 世界に誇る独自の文化があります。
> 美しい四季の移ろいに育まれた和の心。
> 豊かな四季の自然を慈しむ心は、芸術、
> 精神、生活などの様々な面でその形を
> 顕わしています。幾千年の歳月に熟成
> され、現代に伝わる和の心は、文化の
> ひとつの形である食においても美しく
> 結晶しています。美しい自然の中で、
> 忘れかけている和の心をしみじみと味
> わう。そんな時間のおもてなしが、
> わたしたちの想いです。山緑に囲まれた
> 静寂、日本建築の清々しさ、食文化の
> 深い味わい、‘和の心’を心ゆくまで堪
> 能いただきたいと希っております。

この精神は芸術であろうとグルメであろうと建築であろうとジャンルは関係なく、その心を持った人達(それを楽しむ人達も)だけが通じ合えるものだと思います。なので、たとえ同じ仕事をしている人達であっても、その心が無いと接点が無いぐらい通じ合えない。
---------- morito [ 編集] URL . 03/05, 22:59 -----

先月オープンした表参道ヒルズ、
http://www.omotesandohills.com/main.html
関東大震災の後に建てられた同潤会アパートが老朽化してしまったので、みんなに惜しまれながらやむをえず建て替えとなったのですが、最初「森ビル」が請け負うと聞いた時、六本木ヒルズみたいなのを想像してしまったんですが、できたものは、表参道のシンボルであるケヤキ並木の高さを超えないように配慮された建物でした(そのかわり地下が5階とかあるのかな)。設計をされた安藤忠雄さんの力に負うところが大きいと思うのですが、表参道(同潤会アパート)に対するみんなの想いを巧く汲み取ってくれたんだなぁと思いました。(同潤会アパートの一部が残されているそうです)。
集客量がとてつもなく大きいので、みなさんの挙げられた事例とは比較できないかとも思いましたが、商店街の人たちが毎朝、清掃作業をしていたり、数年前には「ケヤキが痛むから」と冬の名物だったイルミネーションをやめたり、秋祭りには町会からおみこしや山車が出たり、都会の真ん中なのに、意外と地域に根付いているんですよね、みなさん。
---------- chobi [ 編集] URL . 03/06, 08:55 -----

そんな配慮がなされているんですね。名前が他の某ヒルズみたいでいただけませんが(笑)都会の人のほうがこういった環境や文化への取り組みや意識がしっかりしてるような気がします。同潤会アパートで思い出すのが、静岡に居た頃、このアパートを写真に撮りたいという新人フォトグラファーに同行したことがあるんだけど、地元にも生活感のある古いアパートは結構あるのに何でわざわざ同潤会アパートなの?と思った事があります。そして、地元のボロアパートはは嫌だけど表参道の同潤会アパートになら高いお金を出しても住みたいという若い人達も多く、もしかしてあそこに住んでる人達ってそういう人達の集まりなのかな?なんて思ったりしました。古いものが大切に遺されていると一言で言っても、それに対する考え方が個人によっては「単なるファッション」だったりして複雑な思いです。
---------- morito [ 編集] URL . 03/06, 15:36 -----
うかい鳥山
うかい鳥山といえば、その頃はまだ、高尾の山の中に出来たばかりのお店でした。
私が小学生の頃、「高尾の方に良い店ができたらしいから行って見よう」と、初めて両親や親戚と一緒に行きました。(当時、父の職場が八王子だったこともあり・・)
スズメの串焼きとかが出てくるんですよね〜〜(^_^;)
古民家の囲炉裏でくつろぎながら食事ができるお店でした。

数年前、車で出かけた時に、八王子バイパスの近くで、ウカイリゾートというお店を見かけて、あのうかい鳥山のチェーン店と知り、あの店がまだ健在なのを知りました。

ちょっと前に、TVの番組でも取り上げられていて、うかい鳥山が昔のままの面影で続いている事を知り、何かうれしい気分でした。
お店の理念というか姿勢が、お客に支持された結果、開店当時から変わることに無い姿を維持してこられたのだと思います。


---------- mie [ 編集] URL . 03/06, 23:35 -----

ウカイ・リゾートには行った事が無いので是非行ってみたいです!
横浜うかい亭は金沢から古い民家を移築したそうです。うかい鳥山は茶室のような個室に料理を運んでもらえます。どちらも僕はアメリカ人の友達に招待されました(^_^;)
---------- morito [ 編集] URL . 03/07, 06:43 -----

「同潤会アパート」も1つの「ブランド」だったんでしょうねえ。
「わかりやすい記号」っていうか。。。その「名前」に高いお金を出す人がいて。
同潤会アパート、最後の方は、水漏れ(雨漏り?)が酷くて、大変だったと聞きました(^_^;) 私には、ショップ+空き部屋のイメージしかなかったんですが、moritoさんが来た頃には人が住んでたんですね。とんでもない家賃だったんでしょうね〜(^_^;)

---------- chobi [ 編集] URL . 03/07, 10:18 -----
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