スティーヴ・タイレルがディズニーのスタンダードを歌った「Steve Tyrell: the Disney Standards」というアルバムから「Bella Notte」を紹介します。この曲はディズニーの「わんわん物語」(Lady And The Tramp)の主題歌で、54年も前に書かれた曲です。良いものは時を超えて生き続けます。アルバムにはクリス・ボッティやデイヴ・コズなど、今ホットなミュージシャンも参加しています。ボーナス・トラックでこの「Bella Notte」のビデオ・クリップも付いていました。
スティーヴ・タイレルは遅咲きの歌手であり、変わった経歴の持ち主。長い間音楽業界で暮らしてきましたが、それはレコード会社のA&Rマン、あるいはプロデューサーとしてのキャリアだった。歌手として本格的にデビューしたのは1999年・・・なんと50歳の時だった。
これまでスタンダードの楽曲を歌いこなしてアルバムをリリースしているけれど、決して気取っておらず、むしろトム・ウェイツやランディ・ニューマンを連想させるような「しゃがれ声」で、荒目ではあるけれど、温かく陽気な歌声だ。
●Steve Tyrell Official Website
いつも言っている事ですが、僕は「クリエイターである以前に、良質な一般人であることが先」と考えて、技術云々よりもまず世界のあらゆる良いものを堪能し、それらを自分の生活と同調させる事を一番に考えて日々を送っています。「お客様の求めるものを」とか「作品を観てくれる人のために」と言うのは勿論正しいのですが、自分の経験や知識が、自分の作品を観てくれる人達よりも乏しいのでは、そんな謳い文句も単に自分の力を過信する身の程知らずな発言のように聞こえます。仕事として技術を身につける時間、そして仕事をこなす時間の他に、クリエイターはどれだけの時間を持ち、どのようにその時間を使って「与えられる側としての素質を磨いているのか」という事がとても気になるのです。
「制作者としての自分」というのは勿論あるのですが、創作をひとつの舞台とした時に、それは「自分がいかに良いものを作るか」という一人芝居でもいけないし、「客が求めるものなら何でも」という言いなりでもいけないわけで、僕の追求するところは「ハイレベルな良い鑑賞者」と同調することであり、自分がそんな観客になって「正しい目」を持つ事が良い作品を作るための土台であると考えています。
広く浅い「何でも屋」になるつもりなどありませんが、でたらめな「個」に共感を求めたくもありません。良い物の本質を見抜く良い客は、あらゆる事においてバランスが取れているものです。良い音楽、良い芸術、良い食事、そして良い時間の過ごし方・・・それらは感性を磨き、生き方を豊かにします。もし一点集中主義ならそれは「マニア」と呼ぶべきだと思います。マニアはバランスがとれていないものです。クリエイターとして「専門的な知識と技術を持つ」ことは勿論なのですが、そればかりを武器にして、肝心な「土台」が肥えていなければ表現など出来ません(インスタントに資料を集めて真似る偽物ばかりが世の中に氾濫するようになってしまいます・・・日本文化の土台の無さはこれが原因だと思う)。仕事ばかりで、仕事の時間以外の質が薄いなんてのはもってのほか。
試験勉強的に知識を詰め込んでも意味が無く、本当に自分が楽しんで、楽しんでいる人達と共鳴する事(そして素晴らしいものが出来て来る理由を体感する事)が、本物の堪能者たちの満足いくものを理解したという事なのです。その時すでに「どんな物が求められているか」などと考え悩む必要などなく、作るべきクオリティがはっきり見えるものなのです。
カルチャースクールの受講生の作品展じゃないのですから、「自分が一生懸命やったものを観てくれ」だけでは一方通行なのです。世界的に評価されている物を創っている作者と共感し、それらを高い次元で楽しんでいる人達とも共感し、自分がその両者になってこそ初めてその本質を知る。「自分は良い物に金を払う人じゃないけど、自分の作る物には金を払って欲しい」なんてのは最大の矛盾。
とにかく自分自身が本気で多くを体験しないと、すでに体験している人達に与えられるものなど、何も作れるわけが無い。「自分はまだまだ足りない」などと言ってる暇があれば、その時間に何かひとつでも行動できるはず。
![]() | Disney Standards Steve Tyrell (2006/02/28) Disney この商品の詳細を見る |



